スキップフロア
スキップフロア_d0017039_21333660.jpgスキップフロアについては今までまとめたことがなかったので、ここで一度整理してみました。

スキップフロアとは?
半階分づつずれながら連続する層構成のこと。レベル差のある複数の床をもつ建築物の層構成を、スキップフロアということも多い。

スキップフロアのメリット1-広く見せる
・フラットなときより、体感する気積量が増えるので、実面積以上の広がり感をつくれる
・吹き抜けを設けずに広がりをつくれるので、使える床を減らさずに済む
・ずれた床によって空間に変化や流動性がうまれる

スキップフロアのメリット2-変化のある空間をつくる
・床レベル差によって、天井高が変化するので、空間の性格付けも可能
・床のエッジができるので、空間に方向性が生まれる
・段差によって、落ち着き感、まとまり感のあるスペースををつくることができる。
・ワンルーム空間を分節するときに有効、

スキップフロアのメリット3-視線の演出
・視線が上方または下方斜めに抜けるなど、変化に富んだ視線が楽しめる。
・ずらすだけで、高い天井高にしたときと同じ、見上げる視線が得られる

スキップフロアのメリット4-光を導く
・ずれた床の間から光を導入することも可能
・南側の階高を上げることで、家の奥まで光を導入することが可能
・ダイレクトゲインで太陽熱を利用するときにも有効

スキップフロアのメリット5-無駄をなくす
・廊下がないプランニングが可能。狭小住宅の常套手段
・アドルフ・ロースのラウムプランのように、空間を無駄なく活用できる
・階段吹き抜けを小さくすることが可能。

スキップフロアのメリット6-法規をかわす
・1種高度などの厳しい斜線を、階高の変化でかわすことができる
・防火地域、準防火地域では、ロフト付き2階とすれば、要求される防火のグレードをワンランク下げられる

スキップフロアのメリット7-活動を促す
・ずれた床が住まい手同士の間に適度な距離感をつくる
・段差が活動を促す(アフォードする)ことが期待できる
・すわれる場所、たたずむ場所が家の中央にできる
・例えば縁側のように段差がコミュニケーションを生み出す契機となる

スキップフロアのデメリット・課題
・空間把握が困難。模型なしだと建主さんはまず理解不能。
・木造住宅だと設計も施工も非常に困難。RCでも打ち継ぎなどが問題となる
・もともと空間のつながりを持たせる構成手法なので、部屋数の多いプランには対応しにくい
・遮音がしにくい
・歳をとったときしたときに、上り下りが大変と言われることもある
・エレベーターが設置しにくい。(設置するときは通過型のエレベーターに限る)
・昔からある形式ではないので、家相は謎

導入を検討すべきケース-都市部や傾斜地に
・傾斜地に建てるケース
・半地下地下室があるケース
・駐車場(ガレージ)の上部を利用するケース
・床下収納や、小屋裏収納など、1階に満たない階高の部屋があるケース
・厳しい斜線制限がかかるケース
・準防火地域、防火地域制限がかかるケース
・狭小住宅のように規模が制限されるケース

フラットで普通に建てた方が望ましいケース-平坦な別荘地などに
・ハウスメーカーの設計施工(設計に手間暇をかけられないケース)
・模型をつくらない設計者に依頼するケース
・敷地面積が広大で、平屋建てが望ましいようなケース
・身体的ハンデがあったり、車椅子の利用がはじめから想定されるケース
・大型物品の出し入れなどがあるケース(店舗付き住宅など)
・空間の連続性よりもプライバシーの確保がが要求されるケース

スキップフロアの事例
・アドルフ・ロースの住宅、ポール・ルドルフの住宅、アルバー・アアルトの住宅、土浦亀城自邸  ・・・etc

スキップフロアで計画する今日的意味
・6/20改正以降、法規的にもコスト的にも3階建てはつくりにくくなってくるが、4号で済むスキップ2階、ロフト付き2階は、デザインの可能性が充分残されてる。
・ラウムプラン型建築は、伝統建築にはない型式なので、まだまだ、やられていないことがたくさんあるはず。バリアフリーという標語によって失われた空間の魅力を復活させたい
・通常、間取りを考えるときは「平面」で考えているが、「断面」で間取りを考えれば、スキップフロアの構成が自然と導かれることが多い。むしろ、法的に様々な形態制限がかかったりするときは、フラットな構成にする方が強引である可能性もある。

カツドウノイエシリーズ=スキップフロアの家というわけではないのですが、建主さんの要望もあって、アイプラスアイでは、ほとんど全部の住宅にスキップフロアを採用しています。

(つづく)
by iplusi | 2007-07-29 21:59 | その他いろいろ
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