「新米建築士の教科書」書評 byエコ住宅の伝道師 松尾和也さん
d0017039_15105107.jpg年間何十ものセミナーをこなす、エコ住宅の伝道師、松尾和也さんが、「新米建築士の教科書」の書評書いてくださいました。高速で回転する頭脳そのままの疾走感あふれる文章です。
松尾さん曰く「住宅関連会社に努めている新入社員から入社3年目くらいの人にとっては、これを読んでいるかいないかで今後の伸び方、及び仕事への取り組み方、スピードがまるで違ってくる」とのこと。
全文をFACEBOOKから引用させていただきます。ぜひご覧ください。




飯塚さんが新しい著書をわざわざ送って下さったのが
届きました。

渡欧中に届いていたのを昨日見て、昨晩中に読んでしまいました。
住宅設計人生一筋20年の私から見ると知らないことはほとんどありませんが、その20年で学んできたことをよくまあこれだけの厚さの中にコンパクトにしかもわかりやすくまとめたもんだと感心しました。

ご本人曰く「編集に二年かかった!!」そうですが、それも全くうなずけるものでした。
特に住宅関連会社に努めている新入社員から入社3年目くらいの人にとっては、これを読んでいるかいないかで今後の伸び方、及び仕事への取り組み方、スピードがまるで違ってくると思いました。
工務店の社長さん、及び設計部長さん、工事部長さんに特に聞いておいてほしいのは、上記にあてはまる人には全員必ず読ませたほうが皆さん自身、及び会社全体に大きな効果があるでしょうということです。

飯塚さんの事務所には私自身訪問しました。所員さんは5名いるかいないかで面積も10坪あるかないかのような典型的な住宅設計事務所です。
こういった事務所の場合、一般的にほとんどの業務が「習うより慣れろ」「仕事は盗むものだ!」ということでチェックリスト等はほとんどありません。(逆に住宅メーカーになると過剰なチェックリスト、帳票のあらし・・・)
しかし、アトリエ系の事務所ながらチェックリストがきちんとあって、しかも引渡し時の取扱説明書まできちんと掲載されてある・・・
かくいう松尾設計室は

・打ち合わせ時のチェックリスト
・プレカット図チェックのチェックリスト
・製本時のチェックリスト(過去のミスに基づいた400項目!!)
・現場監理チェックリスト

まだもう少しありますが、これだけ取り揃えています。
また取扱説明書に関しては冷暖房器具、加湿器、除湿機の使い方推奨設定温度、湿度、カビを生じさせにくい暮らし方。加湿器等の選び方、等々まで住宅メーカーの取説でも書いてないことまで書いてあってそれを引渡し時に説明しています。

これをやっているのは、住宅で押さえておかなければならない項目が多岐に渡りすぎている現実にあります。その中でいかにベテランで仕事がよくできる担当者といえど、チェックリストなしにもれなく仕事ができるということはありえない現実があるからです。(チェックリストがあっても漏れることは多々あります)
こういったチェックリストはその会社の「秘伝のタレ」のようなものであり、それをたった1800円で公開しているというのはちょっと安売りしすぎな感じもしないでもないです。住宅系フランチャイズならこのチェックリストを始めとする各種資料を得るためには加入金だけで300万~500万取られます・・・
別の言い方をするなら、自分で勉強する人には1800円で入手できることも、勉強しなかったりアンテナを張っていない人には500万円かかってしまうことがあるとも言えるでしょう。

この本を読んでいてもうひとつ思ったことがあります。
まず、今の住宅業界では分業が進み過ぎていること
特に住宅メーカーになると

営業マン
設計マン(ほぼ平面、立面を考えるだけ、契約に至る確率が非常に低いからとんでもない数のプランばかりをずっとやっている)
インテリア・コーディネーター
現場監督
本社勤務のCADオペレーター
外注の確認申請代願事務所
その商品を開発する開発担当者(外観、仕様等を決定する)

によって一軒の住宅が成り立っているという現実があります。
よって住宅メーカー勤務しかしたことがない人はこの本に書いてあることをトータルでやったことがある人は絶対にいません!!
この本に書いてあることを一通りできてこその一人前ですが、それをやれるのは小規模の住宅設計事務所しかないというのが実態です。
しかしながら、小規模の住宅設計事務所のほとんどは確認申請の下請け業務をやっているか、地元中堅ビルダー、工務店の実施図面を下請けで書いているという会社が大半を占めます。
また、アトリエ系と言われる設計事務所の場合は、大半が3名以下で構造、断熱、給料体系、勤務時間等で劣悪なところが多く、飯塚さんの会社のように、デザインセンスもあって、品質監理、構造、断熱まできちんと押さえている会社となると銀河系の中から生命がいる星を見つけるくらいの確率・・・とまで言うと言い過ぎかもしれませんが、それくらい確率は低くなります・・・

この本に書かれてあることがきちんとやれば、飯が食えない設計事務所も確実に食えるようになると思います。
しかしながら、この本の厚さで書ききれなかったところは「どうやったら仕事が取れるのか」というところ、特にネット戦略までは書かれてはいません。
あとは、許容応力度計算による耐震等級3と書かれていれば良かったなあとは思いました。

話が長くなりましたが、やる気や能力のある若者がきちんと一人前になるにはどこで修行するかということが本当に重要になってきます。意匠、断熱、構造、耐久性・・・これらはどれも必須項目ですが、これらをトータルで実務レベルで教えられる実務者向けの教育ツールもしくは機関をつくれないか・・・ちょっと前からそんなことを考えています。

by iplusi | 2017-04-11 15:12 | その他いろいろ | Comments(0)
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