建築と社会を結ぶ―大髙正人の方法
2/5まで、湯島の国立近現代資料館にて、私の師匠、大高正人の展覧会「建築と社会を結ぶ―大髙正人の方法」 が開かれています。大高さんはメタボリズム運動の一員であり、何度も建築学会賞を受賞している有名な建築家でありながら、極端に著作が少ないため、長らく謎に包まれた建築家でした。そんな大高さんの全体像を俯瞰できる、初の展覧会となっております。会期中にぜひご覧ください。
建築と社会を結ぶ―大髙正人の方法_d0017039_00261769.jpg
看板にあるPAUは大高さんの思想を示す標語ですが、プレファブリケーション、アート&アーキテクチャー、ウルバニズム(アーバニズム)の頭文字です。今どきの設計者が見るとプレファブリケーションが、ちょっと引っかかると思いますが、ここでいうプレファブリケーションは「人手を省く生産形式の総体」のこと。いいわゆるプレハブよりもっと広い意味、「ものづくりの視点で検討された、美しさが持続する合理的な構法、およびその原寸ディテール」みたいな意味合いだと考えて頂ければいいと思います。「PAU、つまり都市から原寸ディテールまでを、ものづくりの視点で考え直していく」というのが、大高さんの終生のテーマでした。
建築と社会を結ぶ―大髙正人の方法_d0017039_03160048.jpg
会場全景です。模型と図面、そしてドローンで撮影した、三春ダム周辺施設や三春体育館の空撮映像が見られます。
建築と社会を結ぶ―大髙正人の方法_d0017039_02130169.jpg
若い人が一番面白がれそうなのは向井良吉邸。ランドスケープ建築です。最新号のGAHOUSEにそのまま載っててもおかしくないですよね。早すぎて時代がついてこれなかった名建築。
建築と社会を結ぶ―大髙正人の方法_d0017039_02133093.jpg
また、前川事務所時代に大高さんが描いたという、岡山県庁のカーテンウォールの図面もみどころです。1枚でカーテンウォールの成り立ちが全部わかるようになっています。この図面はお手本として事務所の壁に長いこと貼ってありました。
建築と社会を結ぶ―大髙正人の方法_d0017039_01271469.jpg
13年も在籍したんで、古いのでも展覧会にある建築は大体知ってますが、見たことがなかった建築がこれ。大高さんの旧自邸。親の家を年賀状の図案にしたときに、「僕も昔はこういうのさんざんやったんだよ」と大高さんに言われ、前川事務所時代のプレモスか何かのことだとずっと思っていたんですが、自邸だったとは。
建築と社会を結ぶ―大髙正人の方法_d0017039_01271521.jpg
模型は建築単体のものもあるけど、都市と建築を両方表現したものがメインです。これは三春町民ホールまほら。小さなホールですが、当時30代後半のスタッフ全員、坂田充弘さん、堀越秀治さん、大友晃毅さん、飯塚の4人のチームで設計にあたりました。
建築と社会を結ぶ―大髙正人の方法_d0017039_02135390.jpg
ホワイエの手書き図面の展示もあります。大高さん手書きじゃないとイメージできないので、CAD化する前に手書きで検討してたんですね。この図面描いた記憶ありますが、描いては消し描いては消しだったので、いろんな人が手を入れたはず。ちょうどCAD化する段階だったのか、一番大事な客席入り口の天井がぼかしてあるのが残念。椅子や展示パネルのアンカーを床に打つので、構造のスラブの上にもう一回コンクリート打っています。まあ、本当にそこまでする必要があるかどうかは分かりませんが、山を背後にしょってるから、地下水については細心の注意を払うべきなのは確か。そういうところは本当に用心深い人でした。
建築と社会を結ぶ―大髙正人の方法_d0017039_01271597.jpg
三春は大高さんの故郷ということもあって、複数の公共施設を設計しています。このCGには続きがあるので後ほどご紹介します。
建築と社会を結ぶ―大髙正人の方法_d0017039_02153266.jpg
大高事務所は、ある時期から「フラットルーフを追放せよ」の標語のもと、屋根のある建築しか作らなくなります。今なら、隈さんだって勾配屋根やりますが、当時勾配屋根をやるということは、ジャーナリズムから第一線の建築家としては取り上げられなくなることを意味しました。千葉県立美術館を除いて、内部空間はあまり好きじゃないけど(材料と光のせいですかね)、思想としては正しかったと思います。

さて、ここから先は、大高さんに興味を持っていただくため、展覧会には展示のない蔵出し画像をいくつか貼っておきます。
建築と社会を結ぶ―大髙正人の方法_d0017039_02164435.jpg
先ほどの予告した続きのCGです。大高さんの脳内にあった三春町役場新庁舎をCG化したもの。川を挟んで建ってるのが議会棟だったと思います。手帳サイズの小さなメモに基づき入力しました(大高さんのスケッチはいつもA6サイズの紙に書いた走り書きでした)。アンビルドです。
建築と社会を結ぶ―大髙正人の方法_d0017039_02165556.jpg
多摩ニュータン最後の駅、若葉台駅前広場と周辺施設。これは実際できてます。とても忙しい仕事で、設計まとめの時期は、一日おきに坂田さん堀越さん飯塚のうちの誰かが徹夜してました。私は主に奥の橋と施設系の現場を担当。
建築と社会を結ぶ―大髙正人の方法_d0017039_02170413.jpg
稲城市の中央図書館および健康増進施設(室内プール)。城山公園の北端部、斜面に埋め込まれるように建つ建築。構造は青木繁研究室、設備は高間三郎さん、電気は大瀧さんという豪華メンバーで、両施設とも基本設計まで終わっていましたが、PFIになって計画が頓挫。今はNTTファシリティーズの設計した真四角の図書館が建ってます。
建築と社会を結ぶ―大髙正人の方法_d0017039_02170026.jpg
大友さんと2人でやった神奈川近代美術館新館のプロポーザル。葉山御用邸となりに建つ美術館です。審査員は不明、青焼きで提出せよという変なプロポーザルでした。佐藤総合に負けました。
建築と社会を結ぶ―大髙正人の方法_d0017039_02165152.jpg
五浦の美術館のプロポーザル案。めずらしく大高さんに褒められた絵。今見ると金沢の美術館を半分に割ったみたいな形ですね。色がとてもきれいだったんですが、どこかいっちゃいました。これは切妻くりかえしの内藤さん設計のが建っています。

てなわけで、後半は展覧会とは関係ない絵を貼ってありますが、展覧会はぜひお出かけください。

by iplusi | 2017-01-16 03:29 | その他いろいろ
<< 飯能K邸 外壁張りなど 三宿N邸04案 >>